事例3

株式会社CureApp

行動を変えるアプリが医療を変える

 株式会社CureApp(以下、CureApp)はミッションとして「ソフトウェアで『治療』を再創造する」を掲げる、医療機器ソフトウェア開発の企業だ。日本ではまだ馴染みがないが、生活習慣病や精神疾患などスマートフォンのアプリ等で治療をサポートできる疾患は少なくない。これらの疾病治療は、日常の行動を変えることが重要だが、それは従来の医療システムではケアしづらい。そこで、海外では多くの「治療用アプリ」が誕生し、保険が適用されるまでになっている*5。アプリが医師によって処方されるようになってきているのだ。CureAppでは、まだまだ医薬品やハードウェア医療機器が中心の日本の医療に、治療用アプリの導入を目指し、その先の世界展開を睨む。

 治療用アプリの肝は「行動変容」だ。生活習慣病では食行動や運動習慣、それらに強く関連する考え方(認知)が、精神疾患でも考え方と行動が、有病を左右する。治療用アプリは、考え方に介入し、行動を変える。まさに行動を変えるデザインのプロダクトだ。CureAppでは、未邦訳の本書を、社内の週1の勉強会で数人のメンバーで読み進め、実際のプロダクト開発でも本書のメソッドを取り入れた。

 今では本書が「開発チームの共通言語」として活用され、その結果、機能開発のアイデア発想につながっている。

「CREATE」が共通言語に

 CureAppでは、ニコチン依存症、高血圧、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)などの疾患に対して治療用アプリ開発に取り組んでいる。本書の読解が進み、共通言語化が進められたのは、高血圧のための治療用アプリ「HERB」の開発時であった。

 高血圧治療用アプリ「HERB」のターゲットアウトカム、アクター、ターゲットアクション(第Ⅱ部参照)を明記すると以下のようになるだろう。 ...

Get 行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する now with the O’Reilly learning platform.

O’Reilly members experience books, live events, courses curated by job role, and more from O’Reilly and nearly 200 top publishers.