BJ・フォッグによるまえがき
スタンフォードでの授業の初日には、自分のクラスのどの生徒が世界を変えることになるかなどわかりもしない。
わたしの生徒であるマイク・クリーガーが最初の課題を提出してきたときに、彼の潜在的な能力に気づいた。授業で教えたことを、見事なまでに、自分のデザインとして落とし込んでいた。数年後マイクは、授業でやっていた「センド・ザ・サンシャイン(Send the Sunshine)」というプロジェクトから、世界的現象となったInstagramを生み出すことになる。
Instagramの成功は偶然の出来事ではない。マイクは勝利の法則を導く技能を持っていた。勝利の法則とは、すでにそこにある動機をつつくこと、ものごとをシンプルに保つことだ。同じ法則は、Facebookコース*1を受講するわたしの生徒たちが、2400万以上もの人々を授業での課題に巻き込むのに使っている。
コードを書くことだけなら、数千人もの人たちができる。しかし、それに加えて心理学を適切に使うことのできる人はほんの一握りだ。そして、こと行動を変えることに関しては、適切に心理学を使えるのと使えないのとでは、歴然とした差が生まれる。
もし人間の行動を目の当たりにして困惑することがあったら、それには理由がある。問題なのはあなたじゃない。問題なのは、人間の心理についての古い理論とモデルだ。受け継がれてきた方法論が、現実の世界で行動変容デザインに役立っていることはほとんどない。
行動に関する言葉遣いひとつとってもそうだ。例えば、あなたが習慣を「やめる」のではない。「やめる」というのは間違った表現だ。「やめる」と言うと、あなたの強い意志が習慣を急に追いやる感じがする。より正確な表現は「ほどく」だろう。「ほどく」と言えば、このような行動を取り除くやり方を適切に思い浮かべることができる。習慣を「ほどく」には、粘り強さが必要だからだ。 ...
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