UXのドキュメントをちらっと見ただけでも、ファットだったプロダクトがどれだけリーンになったかは明らかだろう。ジャレッドが手作業で一つひとつの交換を支援したのも、私たちがこのようなことをできた大きな理由のひとつだ。彼は、関係者間のメールで交換の手順を固めたり、直接交換の日時を調整したりした。交換が円滑に進むようにコンビニの前まで行って仲介者的な役割を演じるようなことさえした。

 しかし、その後ジャレッドは実験をさらにハードなものにした。チームの全員(出資者、開発者、デザイナー、その他も含めた全員)が商品やサービスを持ち寄って、交換を成功させるまでテストをしなければならないと強く主張したのである。それまで私は交換に手を突っ込むつもりなどなかった。交換に出したい(あるいは交換で欲しい)古いソファーやパソコンなどなかった。そこで、私は自分のUXスキルを交換に出すことにした([図7–7]参照)。私が「今日の交換」に出品したのは、Skypeで2時間のUXコンサルティングを受ける権利だった。交換対象に大きなこだわりはなかったが、古いFlash動画数本をYouTube動画に変換するという作業を手伝ってくれる人がいればという個別具体的な思いもあった。

 それは恐ろしい経験だったが面白いものでもあった。それ以上に、「あげていいもののマッチングサイト」というもともとのバリュープロポジションがぴったり合う取引だった。ポートランドのデジタルコンサルタント、エドワードからの申し込みを受け入れるまで24時間もかからなかった。点と点がつながったということを心の底から感じた。TradeYaのバリュープロポジションとUXは、eBayよりもむしろOkCupidにずっと近いことを直接体験した。私たちの交換は成功だった。エドワードは私のアニメ動画シリーズをYouTubeに投稿し、私はポートランドでUXの仕事を手に入れる方法を教えた。就職面接の紹介さえした。ユーザージャーニー全体が魔法のようだった。ふたりとも相手のスキルから非常に大きな満足を得た上に、W-9(納税申告書)を書かずに済ませられたので、スキル交換には額面以上の価値があった。出資者たちも自分が見たものに満足した。おかげで、私たちはバリュープロポジションの検証という究極の目標のために実験を続けられた。 ...

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