2章アーキテクチャ思考
アーキテクトは開発者とは異なる視点で物事を見る。これは、気象学者が芸術家とは異なる視点で雲を見るようなものだ。物事をアーキテクトとして見ることを、アーキテクチャ思考と呼ぶ。だが、残念なことに、アーキテクチャ思考を単に「アーキテクチャについて考えること」だと思い込んでいるアーキテクトがあまりにも多い。
アーキテクチャ思考とは、もっと幅広いものだ。それは、アーキテクチャ的な観点から物事を見るということを示している。アーキテクトらしく考えるとは、主に4つの側面がある。1つ目は、アーキテクチャと設計の違いを理解し、アーキテクチャを機能させるために、開発チームとどう協働するかわかるということ。2つ目は、ある程度の技術的な深さを維持しながらも、他の人には見えないソリューションや可能性を見出せるような広範な技術知識を持つこと。3つ目は、さまざまなソリューションと技術の間にあるトレードオフを理解し、分析し、調整できること。4つ目は、ビジネスドライバー†1の重要性を理解し、それがどのようにアーキテクチャの関心事に反映されるかを理解していることだ。
[†1] 訳注:ビジネスを伸ばすために乗り越えなければならない要素のこと。
本章では、アーキテクトらしく考え、アーキテクチャの観点で物事を見るための、これら4つの側面について探っていく。
2.1 アーキテクチャと設計
アーキテクチャと設計の違いは、しばしば混乱を招く。どこまでがアーキテクチャで、どこからが設計なのか。そして、アーキテクトと開発者にはどのような責務の違いがあるのだろうか。アーキテクトらしく考えるとは、アーキテクチャと設計の違いを理解し、この2つがどう密に結びついてビジネスや技術の問題に対するソリューションを形成するかを見極めることだ。 ...
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