はじめに

 「バイオインフォマティクスを始めるにあたって、どのような本を読めばいいだろう?」

 2年前、私は自分自身にこのように尋ね、この質問への回答として本書が生まれた。私がこの分野で仕事を始めたときには、PythonとRのプログラミング経験はあったものの、それ以外の経験はほとんどなかった。私はバイオインフォマティクスに関する優れた入門書を探し回っていた。良い本も何冊か見つけることができたものの、ほとんどの書籍は私が日々バイオインフォマティシャンとして従事している作業を直接扱ったものではなかった。私が見つけたテキストのいくつかは、理論とアルゴリズムの観点から、バイオインフォマティクスにアプローチしていた。たとえばSmith-Watermanアラインメント、系統解析(phylogeny reconstruction)、モチーフ検索などだ。それらを読むことは大変面白かったが(こうした資料に直接あたることを読者には強くお勧めしたい)、日々のバイオインフォマティクス作業でこうしたアルゴリズムを一から実装する必要には迫られていなかった。そうしたアルゴリズムの、十分に最適化され、テストも行われている実装は、すでに多数存在していた。他のバイオインフォマティクスのテキストは、より実践的なアプローチを取って、コンピューティングに馴染みの薄い読者を対象に、アライナーの実行や、データベースからの配列データのダウンロードといったタスクの、個々のステップを説明するものだった。こうした書籍は私の仕事に直接役立つものではあったものの、ほとんどの書籍の内容が時代遅れなものだった。

 このような理由から、私は最善の「入門用」バイオインフォマティクスの書籍を見つけることができなかった。本書『バイオインフォマティクスデータスキル』は、私が探していた入門用書籍を私自身の手で書いたものになる。本書は、スクリプト言語の習得と、科学的疑問にロバストかつ再現性のある方法で答えるためにバイオインフォマティクスを実践することとの間にあるギャップを、どのように埋めればいいのかよくわからない人のために書かれている。このギャップを克服するためには、データスキルを学ぶ必要がある。これはコアとなるツールセットを使いこなすアプローチだ。 ...

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