第Ⅱ部探索

最良の者たちがあらゆる信念を見失い、最悪の者らは強烈な情熱に満ち満ちている。

ウィリアム・バトラー・イェイツ(『対訳 イェイツ詩集』岩波文庫)

新しい機会や解決すべき課題に直面したとき、人間の本能はすぐに解決策に飛びついてしまいます。問題空間を十分に探索したり、提案された解決策に内在する前提をテストしたり、本物のユーザーと一緒に解決策を検証したりすることはありません。

新製品の設計、既存の製品への機能追加、プロセスや組織の問題解決、プロジェクトの開始、既存のシステムのリプレースといった場合にも、こうした本能が働きます。そのことが、「どんなユースケースでも解決します」と宣伝する高価なツールの購入、新しい手法や組織の再編の全社導入、「社運をかけた」事業計画の投資へと私たちを向かわせるのです。

さらに悪いことに、自分たちの解決策を自画自賛して、今後の続行に疑問を呈するような証拠を無視する「サンクコストの錯誤」に陥ることがあまりにも多いのです。こうした力が権力と組み合わさると、破滅的な結末がもたらされます。クライアントにプロジェクトのビジネスケースのことを質問した同僚は、危うく解雇されそうになりました。

皆さんには、以下の項目を達成してもらいたいと思っています。私たちに超人的な力があれば、これらを達成してもらうまでは、問題の解決や機会の追求のために大規模な計画を開始するようなことはさせません。

  • 達成されるべき計測可能なビジネス成果を定義する
  • 成果に向かって計測可能な進捗を示せる、最小限のプロトタイプを構築する
  • 提案する解決策が顧客のために作られ、実際に価値を提供していることを実証する

残念ながら、私たちは超人ではないので、しかるべきときに使えるように本書を手元に置いてもらえると信じています。 ...

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