4章

区切られた文脈どうしの連係

 区切られた文脈は、同じ言葉の一貫性を守るだけなく、モデルを作る枠組みを提供します。モデルの構築には、目的の特定、つまり境界が必要です。境界は同じ言葉が通用する範囲を分割します。ある区切られた文脈の同じ言葉は、特定の課題を解決するために、事業活動をモデル化します。同じ事業要素(ヒト、モノ、コト)を対象に、もう一つ別の区切られた文脈を設定すれば、異なる問題を解決するための別のモデルを構築できます。

 さらに言えば、区切られた文脈が異なれば、それぞれのモデルを独立して実装し進化させることが可能です。とはいえ、区切られた文脈そのものが独立しているわけではありません。完全に独立したコンポーネントを集めるだけでは、システムは構築できません。システムとして機能するには、コンポーネントどうしの連係が必要です。区切られた文脈も同じです。個々の区切られた文脈は、独立して進化できますが、お互いに連係することも必要です。結果として、区切られた文脈の間には、必ず接合部分が存在します。この接合部分を区切られた文脈間の「契約」と呼びます。

 契約が必要な理由は、異なる区切られた文脈どうしでは、モデルと言葉が異なるからです。契約とは、利害が異なる複数の当事者間の取り決めです。ですから、取り決めを明文化し、お互いの利害を調整することが必要です。また、定義によって、区切られた文脈はそれぞれ独自の同じ言葉を使います。連係する場合、どちらの文脈の同じ言葉を使えばよいでしょうか。連係を実現するためには、このような関心事を重要な設計課題として取り組む必要があります。

 この章では、区切られた文脈どうしの関係を明確にし、うまく連係するためのドメイン駆動設計の考え方とやり方を学びます。どの連係方法を選択するかは、区切られた文脈を担当する開発チーム間でどう協力するかに依存します。ドメイン駆動設計のさまざまな連係方法を、チーム間の協力関係の違いによって、 ...

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