5章機械学習の基本

「機械学習」については読者の皆さんもすでにあれこれ耳にしていると思います。今や「バズワード」のひとつであり、機械学習を応用すればどんな問題でも1日でパッと解決できるというようなユートピア的なシナリオから、機械学習のアルゴリズムに潜む恐ろしいバイアスが人類を抑圧するといった悲惨なシナリオまで、それこそ何でもありの状況です。

しかし機械学習の実態はもっと基本的な(地味な)もので、データサイエンティストが使いこなすさまざまなツールのひとつにすぎません。しかも、もう何十年も前から使われています。以前と変わったことといえば、近年ようやく、高性能の機械学習ツールを使えるほどの処理能力を備えたコンピュータが価格面で昔よりはるかに入手しやすくなった点と、機械学習システムの簡易版がパッケージ販売されるようになり、昔より手軽に購入できるようになった点です。

この章では、そんな機械学習がどのような問題をどう解決しようとするのか、また、データサイエンティストが現時点で活用できる他の統計手法と比べてどう違うのかを解説します。当然ながら初心者向けの章となりますので、機械学習に詳しい方は次の章へ進んでいただいてかまいません。

5.1 機械学習の目的

3.1 アルゴリズムの簡単な例」で、髪の毛の本数を予測する、ごく単純なアルゴリズムを紹介しました。わずか3つの独立変数(3章参照)を一次式を用いて組み合わせたアルゴリズムでした。

y=c+\beta_{1} \cdot x_{1}+\beta_{2} \cdot x_{2}+\beta_{3} \cdot x_{3}

具体的に到達したのは次の式(3.1)でした。は頭の表面積、 ...

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